男性型脱毛症診療ガイドラインとは?専門家の医師がまとめた育毛剤や発毛剤の科学的資料
「男性型脱毛症診療ガイドライン」という薄毛治療に関するガイドラインがあるのをご存知でしょうか。これは、専門医が、薄毛の治療法(育毛剤・発毛剤)の効果やメリットデメリットを、科学的な観点から検証した資料です。今回は、このガイドラインの内容、中身、策定された経緯を紹介します。
日本皮膚科学会所属の医師が策定
「男性型脱毛症診療ガイドライン」は、日本皮膚科学会に所属する、大学病院の医師が2010年に策定しました。執筆者はそれぞれ以下の医療機関から集まりました。
- 東京医科大学
- 大阪大学
- 北里大学
- 日本医科大学
- 秋田大学
- 順天堂東京高等高齢者医療センター
- くらた医院
※ガイドラインの原本は、日本皮膚科学会のHPにあります→男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版)
男性型脱毛症診療ガイドラインの目的
ガイドラインの目的としては、薄毛に関する科学的根拠のない治療が横行していたのを防ぐためです。近年は、科学の進歩によって、薄毛改善、薄毛治療に有用な育毛剤や発毛薬が発明されています。しかし、それでもなお、科学的に根拠がなく、効き目のない薄毛治療が行われていました。
そこで、医師と患者双方にとってメリットがあるよう、標準的治療法を促進することを目的として、ガイドラインが策定されてました。策定当時に行われていた薄毛治療について、科学論文の実験結果から、その治療法の効果や妥当性、副作用への影響を評価しています。
ガイドラインの執筆者に利益相反なし
男性型脱毛症診療ガイドラインの特徴は、中立な立場で、薄毛に効果的な治療法を紹介している点です。執筆者には、薄毛の治療薬の開発や、薄毛治療を行っているような人は入っていません。もし、薄毛治療に携わっている人が入った場合、恣意的な結論を導く可能性があります。
今回のガイドラインは、薄毛に悩む患者のためのガイドラインのため、利益相反がないことが大切です。策定に当たっては、ガイドラインの著者が、そういった利益相反がない人物であることが、きちんと確認されています。そうした中立な立場の専門家が、科学的な実証実験の結果に基づいた、薄毛に効果があると認められた方法を紹介し、推奨しない治療法についても紹介しています。
ガイドラインの項目
ガイドラインでは、薄毛治療に用いられている薬品と治療法について、10種類を紹介しています。それぞれの薬品について、今までの研究論文の実験結果を参照し、効果のあるもの、身体への影響や副作用の有無を調べています。実験結果から、以下の5段階に分けて、治療効果を評価しています。
- A評価:薄毛治療への利用を強く推奨する
- B評価:薄毛治療への利用を推奨する
- C1評価:薄毛治療へ用いても良い
- C2評価:薄毛治療効果が認められないため、お勧めしない
- D評価:薄毛治療への利用しないことを推奨する
ガイドラインに掲載された育毛剤
男性型脱毛症診療ガイドラインに掲載された薬品・成分は以下の通りです。
○外用薬
- ミノキシジル
- 塩化カルプロニウム
- t-フラノバン
- アデノシン
- サイトプリンペンタデカン
- セファランチン
- ケトコナゾール
○内服薬
- フィナステリド
○治療法・施術
- 人工植毛
- 自毛植毛
紹介された育毛材・発毛薬の実験結果に基づく評価
それでは、ガイドライン上でA評価「薄毛治療への利用を強く推奨する」と評価されている、2つの治療法を紹介します。
1.ミノキシジル:男性A評価、女性A評価
ミノキシジルの外用による効果は、ガイドラインに掲載された最高評価Aを獲得したうちの2つです。ガイドラインでは、男性にはミノキシジル5%配合、女性にはミノキシジル1%配合の塗り薬を、それぞれ頭皮に塗りつけた実験では、科学的に有効な発毛効果・薄毛改善がありました。さらに、1年間の間に薄毛が進行しなかった人を含めると、非常に多くの人に治療による効果が認められたとのことです。
2.フィナステリド(プロペシア):男性A評価、女性D評価
フィナステリド内服は、商品名である「プロペシア」として知られています。研究論文などに掲載されている実験結果では、男性には薄毛改善に有効であったと確認されています。副作用として性欲減退が掲載されていますが、フィナステリド服用による原因かどうかまでは分かっていないそうです。
そのため男性にはA評価となっていますが、ミノキシジルと違い女性ではD評価となっています。ガイドラインによると、女性の実験結果では、薄毛改善効果は確認できなかったそうです。さらに、妊婦の場合は、胎児の生殖器異常などが発生すると記述があります。そのため、ミノキシジルと異なり、女性には推奨できない治療法となっています。
参考記事:フィナステリド服用の効果と副作用の影響を解説!AGAの抜け毛抑制と薄毛改善する発毛薬
育毛剤の多くはC1またはC2評価
その他にも、色々なカタカナ名の物質の治療効果がかかれていますが、いずれも、C1評価で、「用いてもよい」レベル、またはC2評価の「治療効果が認められず、おすすめしない」です。確固たる実験結果によるエビデンスがないレベルもの育毛剤になります。
B評価「薄毛治療への利用を推奨する」に自毛植毛
その他に乗っている薄毛治療に、「植毛」があります。植毛には、①人工植毛、②自毛植毛の2種類があります。人工植毛については、アメリカのFDAなどでもその影響が報告されており、禁止している国もあるそうです。そのため、D評価です。それに対し、自毛植毛は、自分の毛を豊富な部分から、薄い部分に移すだけです。身体の拒否反応もないため、自毛植毛は薄毛治療に勧められるB評価を獲得しています。
ガイドラインが推奨する治療まとめ
ガイドラインとして、専門医が推奨する「AまたはB評価」を獲得した治療法をまとめると、以下の3種類です。
- ミノキシジル:A
- フィナステリド:A※男性のみ
- 自毛植毛:B
薄毛の対策を考える際は、日本皮膚科学会に所属する専門の医師が認めた上記3つの治療を考えることが、より薄毛改善効果が得られます。
男性型脱毛症診療ガイドラインについてまとめ
それでは、今回、紹介してきました、専門の医師がまとめた「男性型脱毛症診療ガイドライン」についてまとめます。
- 日本皮膚科学会に所属する医師たちによる策定
- 科学的根拠のない薄毛治療が横行するのを防ぐ目的
- 発毛薬開発など利益相反がない医師を選抜し、執筆
- 主要な薄毛治療を実験結果に基づいて効果をA~Dで評価
- A評価はミノキシジルとフィナステリド(男性限定)のみ
ガイドラインは、科学的な根拠が伴わないまま、行われていた薄毛治療に一石を投じたものです。薄毛に悩む人にとって目に通しておいたほうがよいので、ぜひ一度読んでみてください。
※男性型脱毛症診療ガイドラインのA評価のミノキシジル、フィナステリドを配合した、AGA治療薬リバースを、私は実際に服用・体験しています。その効果や実感、副作用などの身体への影響をまとめた記事もぜひお読みください。